Archaeology of the Future-Digging & Building

ART

東京オペラシティアートギャラリーで開催中の田根剛さんの『未来の記憶 Archaeology of the Future-Digging & Building』を観に行ってきました。

田根剛さんは、フランスを拠点に世界各地でプロジェクトを進めている建築家さん。

エストニア国立博物館や個人の邸宅などの建築だけでなく、ミナペルホネンの展覧会やエルメスのショーウィンドウの展示、ミハラヤスヒロのファッションショーにも携わっています。

今回の展示は、田根さんのインスピレーションの元となっている写真やエストニア国立博物館の映像、現在進行中の建築の模型やコンセプトとイメージ映像の展示でした。

田根さんは建築をつくるときに考古学者のように時間を遡って、場所の記憶を掘り起こすことから始めるそう。

その頭の中を映し出すような大胆な展示。

 

 

分類と調査を繰り返すことで思考を整理していくこの方法を田根さんはArchaeological Reseach(考古学的リサーチ)と呼んでいます。

このフロアは、イメージとテキストを使って「記憶」という概念そのものをリサーチする実験空間として体験できます。

 

 

歴史の教科書で見たことのあるものや初めて見るもの…

とにかく膨大なイメージに圧倒されます。

 

20代のときには、エストニア国立博物館の国際設計競技に勝利し、10年の歳月を経て2016年に竣工を迎えています。

エストニア国立博物館は、もともと旧ソビエト連邦の軍用施設として占拠された滑走路の延長線上に造られたもの。

 

 

このエストニア国立博物館の内部と外部の映像を実際そこにいるかのような臨場感で観ることができます。

 

 

「軍事的暴力性」というものと、「ナショナルミュージアム」という民族の歴史を伝えて行く場所がつながるということには意味があるのではないかと考えて「メモリーフィールド」と名付けられたプロジェクト。

負の遺産であった場所は残したまま、次の世代に繋がる未来の記憶という意味で造られたとのことです。

田根さんはこの建築から、場所が持っていた過去の記憶を掘り返すことから、未来につないでいくものを作っていかないとという思いを持ち始め、さまざまなプロジェクトをスタートし始めたそうです。

 

現在は、青森県弘前市の煉瓦倉庫を美術館にするプロジェクトや、京都市十条に古い建物を解体して集まっていた古材を再利用したピラミッド型の文化複合施設を建設中だったり、日本でもさまざまなプロジェクトが進んでいます。

現在進行中の建築の模型や映像も見ることができました。

 

 

 

さらに印象的だったのはブータンでの村づくりのプロジェクト。

 

 

ブータンは幸せの国として有名で、当初ブータンに五つ星のホテルを作ろうとプロジェクトが進んでいました。しかし、今は若者が都会に仕事を求めているため過疎化が進んでいることを知った田根さんは、五つ星の村づくりにプロジェクトを変更。

村の暮らしの仕組みと伝統的な民家を用いて、村人と暮らすすべての体験が5つ星となるアイデア。

村人はそこに住み、そこで働き、田畑で作物を育て、器や織りなどの工芸で伝統をつなぎ、来訪者は森と谷間で暮らすブータンの村での体験をするというもの。

 

そして心打たれたこのプロジェクトに込められた思い。

 

 

この1つ1つがブータンだけでなく、本来私たちが大切にしていかなければならないものではないかと感じました。

 

日本で、地方は人口が減って空き家が増え、反対に東京はどんどん新しい建物が出来ています。

秋田で生まれ育ち、東京で暮らす私は、自分だけが取り残されて居場所がなくなるのではないかと、たまに不安な気持ちになります。

 

田根さんは「記憶は現在を動かし、未来をつくる」という信念でさまざまなものを創造しています。

今回の田根さんの展示を観て、ただ新しいだけじゃなく、昔ながらの人々の暮らしや文化、土地の歴史などを大切にしているということが、どれほど貴重なものなのかと考えさせられました。

昔、自分が見たことのある建物の記憶や触れたことがあったり懐かしい香りのする木材、思い出の場所。

そんな懐かしさと希望に満ちた田根さんの建築は、目まぐるしく変わる景色の中で安心できる居場所になるのではないかと思っています。

 

12月24日まで開催中です。

ぜひ足を運んでみてくださいね。

 

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